社説1 生保は情報開示をテコにもっと競争を(5/31)
 生命保険会社の業績が上向き、各社は内部留保を積み増し、契約者配当を増やす一方、
利益の内訳を公表するなど情報開示を競い始めた。

 主要生保の2006年3月期決算は保有契約高の減少が続いた半面、保険料収入は増加に転じた。
死亡保障型から個人年金や医療保険などへシフトする保険需要の変化を映している。銀行などの
金融機関を通じた販売に熱心かどうかで変額年金などの伸びに差が出たのも特徴だ。

 銀行の業務純益に当たる基礎利益が増えたのは、低金利・株高の運用環境の下で、配当収入の
増加などで予定利率を運用実績が下回る逆ザヤが縮小したからだ。株式などの損失処理も減少して
膨らんだ利益を原資に、生保危機で取り崩した内部留保を積み増す体力強化や、復配、増配で契約者に
利益を還元する競争に拍車がかかってきた。銀行の自己資本比率に相当する保険金支払い余力も
引き続き全社で向上している。

 前期決算で主要生保は開示を拒んできた基礎利益の内訳を公表した。生保の基礎利益は予定した利率、
死亡率、経費率と実績の差である利差、死差、費差で構成され、三利源と呼ばれる。低金利による
利差損(逆ザヤ)を死差益と費差益で補っているのが実情で、主要生保全体でみると基礎利益の大部分を
死差益に依存する実態が明らかになった。

 利益構成の開示は、死差益を増やそうとした不正な保険金不払いで業務停止処分を受けた
明治安田生命が信用回復の必要に迫られて決断し、他社が追随した。ブラックボックスだった
利益構造の開示で、保険商品の価格(保険料)が妥当かどうかの議論が起き、保険料の値下げや
配当の増加など消費者の視点での競争が活発になることを期待したい。

 長期契約の生保の実態は三利源だけでは評価できないとして、住友生命は保有する保険契約が
将来にわたって生み出す利益の現在価値(保有契約価値)を同時に開示した。欧州で普及している
保険会社の評価手法で、米国では一般企業に近い経営指標が使われている。資産と負債の時価評価など
保険会社の会計制度は国際的な調和も課題になっているが、収益力や健全性をアピールする競争なら
歓迎だ。日本から世界に発信するぐらいの気概をもって積極的な開示に取り組んでほしい。

 日本の主要生保は相互会社組織で、株主の目が光る株式会社に比べ経営に規律が働きにくい面がある。
相互会社の企業統治の強化を含め、最悪期を脱した生保は情報開示と経営改革を競い合ってもらいたい。


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